トリプル改定で何が変わる？2024年診療報酬改定の注目ポイントとは

2024年診療報酬改定は6年に1度の「トリプル改定」

■2025年、2040年問題が背景に

今回のトリプル改定は、2025年問題と2040年問題に大きく関わっています。2025年問題とは、団塊世代が75歳以上の後期高齢者になり、労働力不足や医療・介護の負担増加が増大していくことで、すぐそこに迫っています。

ただ、2025年は高齢者人口の過渡期にすぎず、ピークとなるのが2040年とされています。2040年頃から団塊ジュニアの65歳以上の人口割合が最大化し、現役世代の急減により、医療や介護はもちろん、あらゆる業種での労働力不足がより深刻となります。社会維持や国内経済が危機的状況になるとともに、医療費や年金などの社会保障費も増大することが予想されます。2024年診療報酬改定は、2025年に向けた最後の改定で、さらに2040年問題まで見据えた変革が求められています。

■診療報酬改定が2ヵ月後ろ倒しに！2024年6月1日施行へ

診療報酬改定は例年4月に施行されます。ですが、2023年8月の中医協総会にて、2024年診療報酬改定を2ヶ月後ろ倒しにする案が了承されました。後ろ倒しの理由は、医療機関やベンダーの改定作業の負担軽減のためとされていますが、現在進められている医療DX政策の一環である診療報酬DXに関する議論の中で生まれた変化となりました。

2024年度診療報酬改定～「トリプル改定」の注目ポイント

■医療介護体制の連携

団塊世代が75歳以上となる2025年を目標に進められてきた「地域包括ケアシステム」と「地域医療構想」は、医療・介護需要の動向は人口構成の差により都市と地方など地域ごとに違うため、地域の特性に合わせた提供体制を整えて、住み慣れた地域で最期まで自分らしい暮らしが続けられるように構築されてきたものでした。

2024年改定はその総仕上げの改定とされており、人材や財源が限られてくる中で、医療と介護の安定的な供給のために、医療・介護の連携強化が重要視されています。地域包括ケアのさらなる推進のために、地域医療と介護の連携、在宅医療・介護の充実、地域の実情に合わせたサービス提供が議論されています。

また、医療・介護の連携強化のために設置された「令和6年度の同時改定に向けた意見交換会」では、あるべき連携の姿を「必要な情報の一方向的な提供や閲覧だけでなく、相互のコミュニケーションを深め、現状、課題、目標、計画などを共有しながら、患者(利用者)、家族とも同じ方向に向かい、より質の高い医療・介護の実現につなげること」としています。今後は、医療と介護が共有できるデータベースの構築により、医療と介護を一体的に提供できる情報基盤の構築が求められています。

■医療DXのさらなる推進

より効率的・効果的で質の高い医療サービスの提供を目的とした「医療DX」は、医療DX推進本部の下で「医療DXの推進に関する工程表」に基づいて進めるとされています。その工程表では、オンライン資格確認等システムを拡充し「全国医療情報プラットフォーム」を構築することで、2024年度中の電子処方箋の普及に努めるとともに、電子カルテ情報の共有がスタートされるとなっています。電子カルテ情報だけでなく、介護情報や予防接種、妊婦健診等の情報も共有していく方針が示されました。

また、診療報酬もデジタル変革に対応した改定が求められており、「診療報酬改定DX」として推進されています。「共通算定モジュール」を各ベンダーに導入することで、医療機関における診療報酬改定時のデータ反映などの作業負担を軽減させる取り組みや、2024年度にマスタ及び電子点数表を改善し提供することで共通コストの削減が予定されています。